不動産の相続において、避けて通れないのが「財産調査」と「相続登記」です。特に相続登記については、2024年4月から義務化が開始され、放置することのリスクはこれまで以上に大きくなっています。
「うちは大した財産がないから大丈夫」
「親の通帳は預かっているから把握できている」
そう思っていても、いざ手続きを始めると、知らない不動産が出てきたり、預貯金の全容が不明確だったりと、思わぬ壁にぶつかるケースが少なくありません。財産が不明確なままでは、遺産分割協議も進まず、結果として登記も放置され、将来的なトラブル(過料や権利関係の複雑化)を招く原因となります。
この記事では、熊本市で実際にあった、不動産会社のサポートのもと「財産調査」から「相続登記・売却」までを無事に終えられた3つの事例をご紹介します。
なお、ご紹介する事例は、個人情報や対象不動産の特定を避けるため、加工や秘匿などの措置を講じております。
ここからは、熊本市内における相続の事例を3件ご紹介します。財産調査の重要性や、専門家をどう活用すべきか、ぜひ参考にしてください。
1.熊本市にお住まいのY様が、
「財産調査を行い、相続財産の全体を把握できた事例」
相続手続きの第一歩は「何がどこにあるか」を正確に知ることから始まります。自分たちだけでは見つけきれなかった財産を明らかにした事例です。
お客様の相談内容
Y様が相続した不動産の概要とプロフィールは以下のとおりです。
売却物件 概要
Y様が相続し売却を希望する不動産の概要は以下のとおりです。
| 所在地 | 熊本市北区四方寄町 | 種別 | 一戸建て |
|---|---|---|---|
| 専有面積 | 131.21m² | 土地面積 | 97.96m² |
| 築年数 | 50年 | 成約価格 | 880万円 |
| 間取り | 3DK | - | - |
相談にいらしたお客様のプロフィール
熊本市で暮らすY様(50代)のもとに、突然の悲しい知らせが届きました。お父様が他界され、生家の相続手続きを妹様とお二人で進めることになったのです。
Y様ご姉妹には、それぞれマイホームがあったため、思い出の詰まった実家については手放すことで意見が一致していました。ただ、亡くなったお父様がどのような資産をお持ちだったのか、その全容がつかめずにいらっしゃいました。
預金通帳や各種書類には目を通したものの、「もしかしたら、まだ気づいていない資産があるかもしれない」という思いが頭から離れません。このモヤモヤを解消したいと考えたY様は、実家の査定も含めて、まず不動産会社に相談してみることにされたのです。
解決したいトラブル・課題
Y様たちは、相続財産の全体像を正確に把握できていないため、遺産分割協議が進められず、売却のための相続登記もストップしている状況を解消することにあります。
相談する不動産会社の探し方・選び方
Y様のように「何があるかわからない」という状況では、単なる査定だけでなく、調査能力の高い会社を選ぶのがポイントです。
| ・物件調査の徹底度が高い不動産会社 |
登記簿だけでなく、市役所での「名寄帳(なよせちょう)」の確認など、プロの視点で徹底的に隠れた不動産を洗い出してくれる会社が理想的です。 また、物件調査は不動産売買業において基本でありながら、各社によってその精度にばらつきがあることも事実です。あとあとトラブルにならないためにも、物件の調査力は押さえておきたいポイントです。 |
|---|---|
| ・「とりあえず売る」ではなく「まず整える」姿勢がある会社 |
売却を急かすのではなく、まずは相続人全員が納得できる「財産の棚卸し」を優先してくれる、誠実なパートナーを見極める必要があります。 とりわけ、相続は親族にとってセンシティブなタイミングです。相続人の納得感を重視することを考えれば、売却を急がせるという選択肢などあるはずもありません。 |
Y様の「トラブル・課題」の解決方法
Y様のケースでは、まずは隠れた財産や不動産がないかを綿密に調査することが重要です。こういった調査は信頼できる不動産会社に依頼するのがよいでしょう。
1.相続財産調査の方法
不動産会社の担当者は、Y様と一緒に「お父様が所有していた不動産」をひとつひとつ確認していきました。相続では思いがけない不動産が見つかることは、決して珍しいことではありません。
・市役所で「名寄帳(なよせちょう)」を取得
名寄帳とは、お父様が熊本市内に持っていた土地や建物の一覧表のようなもの。市役所に行けば簡単に取得できます。実家の裏にある細い通路や、ずっと昔に買った山林の一部などが発覚することもあります。
・毎年届く固定資産税の通知書をチェック
「固定資産税納税通知書」には、所有している不動産の詳しい情報が書かれています。過去の通知書を見返すことで、家族が把握していなかった土地が見つかることもあります。
・登記されていない建物がないか確認
古い物置や車庫は、登記をしていないことがよくありますが、相続財産です。実際に現地を見て回り、敷地内にある建物をすべて確認しておきましょう。
・共有の私道や通路
住宅地では、お隣さんと一緒に使っている私道を持っていることがあります。「うちには関係ない」と思っていた道路の一部が、実はお父様の名義だったというケースも。わずか数メートルの土地でも、きちんと相続する必要がありますので、住宅に面した狭い道路などがあれば、登記を確認しておくのが良いでしょう。
最後に、これらの結果をもとに、協議を実施。司法書士へ遺産分割協議書の作成を依頼することで、不動産に関する調査と相続登記は完了します。
2.結果
詳細な財産調査の結果、お父様の財産の全容が明らかになりました。これにより、Y様と妹様の間で公平な遺産分割協議をスムーズに行うことができ、無事に相続登記を完了させることができました。
その後、北区四方寄町の実家は、不動産会社の早期売却戦略により、880万円で成約しました。Y様は「当初は心配だったけれど、あっという間に解決した。」と、安心されたご様子でした。
2.熊本市にお住まいのE様が、
「財産調査を念入りに行い、安心して相続を終えられた事例」
相続税がかかるかどうかの瀬戸際では、わずかな調査漏れが命取りになります。リスクを回避するために動いた事例です。
お客様の相談内容
E様が売却したい不動産の概要とプロフィールは以下のとおりです。
売却物件 概要
売却したい不動産の概要は以下のとおりです。
| 所在地 | 熊本市西区花園 | 種別 | 一戸建て |
|---|---|---|---|
| 建物面積 | 131.12m² | 土地面積 | 218.54m² |
| 築年数 | 44年 | 成約価格 | 1,500万円 |
| 間取り | 4LDK | その他 | - |
相談にいらしたお客様のプロフィール
熊本市内にお住まいのE様(50代)にとって、お父様が遺された実家の相続は、思わぬ悩みの種となっていました。
ご自身で財産を計算してみたところ、総額はおよそ3,520万円。実はこの金額、とても微妙なラインなのです。相続税がかからない範囲(基礎控除といいます)は3,600万円までなので、あと80万円の余裕しかありません。
「もしかして、まだ気づいていない預金が出てきたら?」
「調べ漏れの土地があったら?」
E様の頭の中には、こんな不安がぐるぐると回っていました。たった100万円分の財産が新たに見つかっただけで、相続税の申告手続きが必要になってしまうのです。
さらに心配なのは、もし相続税を払うことになった場合のお金の準備です。税金は現金で納めなければならないため、「いざという時のために、実家を早めに売って現金を用意しておいた方がいいかもしれない」と考えるようになりました。
解決したいトラブル・課題
相続税の課税対象になる可能性があるため、納税が必要になった際の準備を整えることが必要です。そのためには、適切で綿密な財産調査が欠かせません。
相談する不動産会社の探し方・選び方
E様のように税務リスクが絡む場合は、士業との連携が不可欠です。
| ・税理士との強固なネットワークを持つ会社 |
不動産の評価額ひとつで相続税の有無が変わるため、税理士と即座に連携して試算を行える不動産会社を選ぶべきです。 なお、税理士に単独で依頼することも可能ですが、不動産会社と連携していると、実際に売却したときの金額もわかるため、現金化が必要となったときの資金計画も立てやすいメリットがあります。 |
|---|---|
| ・早期売却に強い地域密着型の会社 |
納税が必要になった場合、申告期限(死亡から10ヶ月)があります。その期限内に現金化できる販売力のある会社が求められます。 そのため、買いたたかれない金額で売り切ってくれる不動産会社を選ぶことも忘れてはいけません。 |
E様の「トラブル・課題」の解決方法
E様は改めて相続財産に漏れがないか、徹底的にチェックすることにしました。
1.固定資産税の延滞金はいくら?
基礎控除(3,600万円+α)の境界線にいる場合、わずかな計上漏れが「申告漏れ」につながります。不動産会社のアドバイスを受け、E様がひとつひとつ確認した項目を整理しました。
1.「みなし相続財産」と生前贈与
通帳や証書がないと気づきにくい、目に見えない財産です。
① 生命保険金・死亡退職金
「500万円 × 法定相続人の数」の非課税枠を超えた分は課税対象。
② 生前贈与(持ち戻し)
亡くなる前3年〜7年以内に受けた贈与は、相続財産に加算して再計算が必要。
2.家の中に眠る「動産」
「古いものだから」と放置せず、市場価値(10万円以上が目安)を確認します。
① 貴金属・高級品
金の延べ棒、記念コイン、ロレックス等の高級時計、着物、毛皮。
② 美術・骨董品
書画、絵画、価値のある置物。
③ 乗り物
車、バイク、船舶(中古車査定額を計上)。
3.「後から入るお金」と権利
手元に現金がなくても、請求権があるものはすべて財産です。
① 未収入金
最後の年金、高額療養費の還付金、確定申告の還付金、未払給与。
② 各種会員権
ゴルフ会員権、リゾート会員権(取引相場を調査)。
③ 債権
知人への貸付金、事業上の売掛金。
4.現金と「デジタル遺産」
最も見落としやすく、税務署も厳しくチェックする項目です。
① 現金(タンス預金)
金庫、仏壇の引き出し、本棚などの現金。
② デジタル財産
ネット銀行、ネット証券、暗号資産(仮想通貨)、電子マネーの残高。
5.相続税がかからないもの
① 祭祀(さいし)財産
お墓、仏壇、仏具など。
2.結果
徹底した調査の結果、幸いにも大きな漏れはなく、基礎控除内に収まることが確定しました。同時に、西区花園の物件は、庭の広さを活かした訴求により、希望価格に近い1,500万円で成約。
E様は「もし税金がかかっても大丈夫なように、早めに動いて現金化できたことが心の余裕につながった」と、納得のいく相続を終えることができました。また、自分のときにこのような思いを子どもたちにさせてはいけない、とご自身の資産についても見直す良いきっかけになったそうです。
3.熊本市にお住まいのW様が、
「財産調査を専門家に依頼して相続手続きを進めた事例」
「自分でやるのは無理だ」と判断し、プロの手を借りることでスムーズに解決した事例です。やはり、もちはもち屋、人の手を借りることも重要です。
お客様の相談内容
W様が相続した不動産の概要とプロフィールは以下のとおりです。
売却物件 概要
W様が相続した不動産の概要は以下のとおりです。
| 所在地 | 熊本市中央区本山町 | 種別 | 一戸建て |
|---|---|---|---|
| 建物面積 | 90.52m² | 土地面積 | 200m²超 |
| 築年数 | 55年 | 成約価格 | 800万円 |
| 間取り | 2DK | その他 | - |
相談にいらしたお客様のプロフィール
熊本市のマンションで暮らす60代のW様。中央区本山町にあるご実家を相続することになりましたが、すでに住まいがあるW様にとって、古い実家の管理は正直、負担でした。
何より困ったのは「お父様がどんな財産を残されたのか分からない」ということ。
通帳はいくつか見つかったものの、他にも口座があるかもしれない。土地や株があるかもしれない。でも、何から調べればいいのか、どこに確認すればいいのか、見当もつきません。
まだ仕事を続けているW様には、平日に役所や銀行を回る時間の余裕はありませんでした。
「プロに頼みたいけど、誰に相談すればいいんだろう」
「費用はどのくらいかかるんだろう」
そんな不安を抱えたW様が最初に訪ねたのは、実家近くの不動産会社。まずは相談窓口として、今の状況を聞いてもらうことにしたのです。
解決したいトラブル・課題
自力での財産調査が困難なため、信頼できる専門家に依頼したい。また、その依頼費用を捻出するためにも実家を早めに売却したいということがW様の切実な願いです。
相談する不動産会社の探し方・選び方
W様のように「丸投げしたい」というニーズには、ワンストップサービスが重要です。
| ・コンシェルジュ的な役割ができる不動産会社 |
単に「売るだけ」でなく、行政書士や司法書士などの専門家を、状況に合わせて適切にコーディネートしてくれる会社が適しています。 あまりイメージが湧かないかもしれませんが、不動産会社を起点として士業の方々が連携するという流れは、不動産会社はもちろんですが、士業の方々にとってもスムーズに話が進むため、ありがたいスキームなのです。 |
|---|---|
| ・査定金額の根拠が明確な会社 |
専門家への報酬支払いを見越して、確実に売れる金額を提示してくれる誠実な会社を選ぶことが大切です。 一括査定サイトなどの利用もやぶさかではありませんが、結果的に高値の査定を提示したものの売却が実現しなかった、という話はよく聞きます。高値の査定額が提示されたときは、しっかりとその根拠を確認し、複数社の意見を聞くようにしましょう。 |
W様の「トラブル・課題」の解決方法
ずばりW様のような丸投げパターンでは、不動産会社にすべて一任する流れが理想的です。
1.相続財産調査を依頼できる専門家とは
「どこに、どの専門家が、どの範囲まで動いてくれるのか」が分からなかったW様に対し、不動産会社は以下の5つの専門家の役割を整理してアドバイスしました。
司法書士(登記と遺産整理のプロ)
不動産の名義変更(相続登記)の専門家です。戸籍収集から、役所での「名寄帳」取得による不動産の洗い出し、さらには銀行口座の解約・分配といった「遺産整理業務」まで一括して依頼できるのが大きな強みです。名義変更をスムーズに、かつ確実に完了させたい場合に最も頼りになる存在です。
税理士(税金申告と評価のプロ)
相続財産が基礎控除を超える可能性がある場合に不可欠な存在です。単なる残高確認だけでなく、不動産の「路線価」に基づいた精緻な評価や、節税につながる特例の適用判断など、税務署に提出するための正確な調査を行います。納税の不安がある時や、資産の正確な評価額を知りたい時に適しています。
弁護士(紛争解決と法的交渉のプロ)
相続人間で意見が対立したり、遺産分割協議がまとまらなかったりする場合に、法的根拠に基づいて交渉や調停を行います。また、将来的なトラブル(争族)を未然に防ぐためのアドバイスも得られます。「話し合いが難航しそう」と感じた際に、唯一の交渉窓口として依頼できる専門家です。
行政書士(書類作成と実務のプロ)
「財産目録」や「遺産分割協議書」といった、相続に不可欠な書類作成をメインに行います。職権で戸籍収集を行うことができるため、W様が最も面倒に感じていた「相続人の特定(家系図の把握)」を代行してくれます。比較的リーズナブルに、書類作成の実務を任せたい場合に適しています。
不動産会社(出口戦略と換価のプロ)
「不動産という財産」が実際にいくらで売れるのか、市場価値を算出します。他の専門家が「権利や税金の整理」を行うのに対し、不動産会社は「売却による現金化」という具体的な出口戦略を担います。相続した実家をどう手放すべきか、売却活動を通じて実務的にサポートしてくれます。
2.結果
W様は不動産会社から紹介された司法書士と税理士に依頼。プロが連携したことで、自分では気づかなかった休眠口座や古い権利関係が次々と判明し、正確な財産目録が完成しました。また、弁護士への相談ルートも確保したことで、将来的な親族トラブルへの不安も解消。
中央区本山町の実家は880万円で早期成約。W様は「プロに任せることで、手間も不安も一度に解消できた」と非常に満足されました。